<茶々という犬のこと>

茶茶は生のエネルギーに溢れています。お散歩のときに車椅子が必要な以外は、まっ
たく普通の、いいえ、きっと普通以上に幸福な犬です。どんなに幸せなのかは……是
非読んでみてください。   著者は、たまさんです 


ZZZ・・・ アンニニュイ〜


出会い編
「この子です」
担当の方が案内してくれたケージの中で、お行儀良く正座しているみたいにおすわりしているコ。困ったように眉をひそめ、上目遣いにこちらを見ているちっちゃいコ。推定年齢10ヶ月。捨てられ、事故に遭い、両後ろ足を失った車椅子のおんなのこ。この子を今日から預かるのかあ…。

世紀末2000年の幕開け1月、「どうぶつたちへのレクイエム」に出会い、続く3ヵ月は初めて知る動物たちの「悲惨」という言葉では言いきれないほどの現状・過去に叩きのめされていました。なぜ、どうして、こんな事ができるのか…。「人間なんて今すぐみんな死んじゃえ!」の超鬱々状態。家族や友人にこの煮詰まった頭の中をブワーっと吐き出しては、ヒカれまくっていました。
そんなネガティブな日々を過ごしていた3月のある日、ポジティブ妹が地元情報誌「ぱど」に載っていた「犬の里親会」に行ってみようと私を連れ出してくれました。(余談ですが「里親会」という言葉もこの年になるまで知りませんでした。)
横浜市営地下鉄 センター南駅前広場。そこでは沢山の犬や猫が新しい家族を待っていました。犬たちを連れて来ているのが「AWS:どうぶつ福祉の会」、猫たちを連れてきているのが「港北ニュータウン動物愛護会」。とりあえず心ばかりの寄付をして、何か他にできることはないかと、AWSの方をつかまえる妹。
「家はもう2匹犬がいるので、これ以上は飼えないのですが(この時はホント2匹でいっぱいいっぱいだと思ってたのに、今って一体…。)他に出来ることはないですか?」
こうと決めると行動の早い妹。
「私達は毎月2回茨城県から来ているので、犬たちを連れて来るにも頭数が限られるし、長旅で犬の負担になっています。お近くなら一時預かりをしていただいて、里親会の時に連れて来てもらえるとうれしいのですが…。」
「一時的に預かるくらいならできるよねえ。ね、ね。じゃ、どうしたらいいですか?」
妹はずんずん話を進めます。犬に直接係る考えが毛頭なかった私は、あまりのことに言葉が出ませんでしたが、私がむなしくパクパクしてる間にも話しはトントン拍子に進み、
「では預かっていただくコを決めて後日ご連絡します。」
「わかりました、ご連絡お待ちしています。」
!!き、決まってしまったのです。一時預かりの里親に!パクパク。(もういいって)

妹の当初の予定では、かわいい子犬が入れ替わり立ち代りやって来る、だったそうですが、やって来たのは子犬でもなければ入れ替わりも立ち代りもしない茶々でした。一時預かりの里親に立候補してから一ヶ月ほど後の2000年4月16日のことです。
茶々が来た経緯はAWSのTさんの手腕と私の考えの無さと妹の不在が重なった結果でした。どの要素が欠けても私達は茶々と出会うことはできなかったのです。運命ってヤツをカンジちゃいます。
Tさんから「車椅子のコか25キロの室内犬を預かってもらえないだろうか」と電話を受けた時、妹はずっと以前より予定していた海外旅行に出かけていて不在でした。私は何事も一人で決められないのに妹の助言をもらえない状況だったのです。Tさんはどちらかしか選択肢がないとおっしゃったわけではないのですが、私は勝手にどちらかを選ばなければならないんだ!と思い込んでしまい、「家の犬たちと相性があえば、どちらでもいいです」なんてカッコイイことを言っていました。ほんとにスットコドッコイ。
次の里親会のとき、家の犬達を連れて行ってみて、相性の良い方を預かるということになり、電話をきりました。後に聞いた話ですが、Tさんはダメ元で言っただけだったそうです。しかし、お話の持って行き方がお上手なんで、まんまとハマッてしまいました。もし妹がいたら「初めからそんな難しいコ(世話の仕方がまるでわからない)や、でかいコ(家の犬たちが2匹とも10キロだったので、25キロは未知の体格だった)は無理、何匹か預かってみて、慣れてきたらいいけど」ときっぱり言っていたはずです。帰って来てからそう怒られましたから間違いないです。
その後25キロの室内犬は無事里親さんが見つかったそうで、里親会当日にやって来たのは「車椅子」の方でした。
と、ここで冒頭につながります。


うーん、ネムイ・・・ ヒヅメ好き近影

茶々来訪より3ヶ月間編
下半身麻痺のために生ずる諸々の世話も、今でこそ家族皆が日常として普通にこなしていますが、来た当初はもう、タ〜イヘン!おむつ一つ取り替えるにも2人がかりで大奮闘。おしっこを撒き散らしながら逃げる茶々。速い、速いぞ、茶々!ゾーキン片手に追いかける私たち。遅い、間に合ってないぞ、私達!うひーっ!こりゃあ、すんごい子預かっちゃったよ〜ん、と内心思ってました。いや、ホント。しかし、一回引き受けたのに、やっぱりタイヘンだからと返すなんて茶々がかわいそうだし、断じてプライドが許さん!許さないんだけど、何でいきなりこんなタイヘンなコが来たんだあっっっ。
なんて、人間側の心の葛藤なんぞどこ吹く風。おちゃらけ、ひょうきん、自由気ままな甘えっ子、わがまま娘の茶々さんは、今日も前足だけでスッタカタッタッターっと軽快に家中走り回るのでした。(カンベンしてほしいわ、ホント・・・。)

さて、私たちは「一時預かりの里親」です。茶々の里親さんを探さねばなりません。当初AWS(敬称略。以下も略)は「横浜のニュータウンの方は意識も高いし、リッチマンが多いから、高級住宅街のマダムたちがこんなかわいそうな犬をほっとけるはずはない。ポスターを貼れば、里親希望者の1人や2人や10人や20人、見つかるに違いない!」と思っていたそうです。(10人や20人はないネ。うん、ない、ない。)
しかし、いざふたを開けてみると、里親希望どころか問い合わせすら全くない。1件もない。あせったAWSは私達の負担を考え、このままではいつ里親さんが見つかるかわからない、大変でしょうからいつでも茶々を引き取りに伺いますと連絡を下さいました。そんじゃあ、私たちも探そうよ、ってことで、町内の掲示板にポスターを貼りまくり、ペットショップ、郵便局、スーパー、獣医病院、ドキホーテなんかにも貼らせてもらい、くだんの地元情報誌「ぱど」に掲載し、いくつかの里親募集のHPに載せ、ここ眞子さんのHPの里親募集にまで載せていただきました。
で、結果は惨敗。「がんばってください」ってメールを数件いただいたにとどまりました。あとご近所の方で、茶々と家の犬たちを散歩させてたら、パジャマ姿で飛び出して来てくれた人がいました。町内に貼りまくってある里親募集のポスターを見て、もし里親が見つからなかったら、保健所に連れて行かれるかも、と心配しておられたそうです。おーい、こんな大手術して、専用の車椅子まで作ってもらってるのに、保健所なんぞに連れてきませんよお。(余談:その方と、その方の弟さんの奥さんとは今も交流してます。)

茶々が来てから2〜3ヵ月くらいはこのような里親募集の呼びかけをし続けました。
で、今はすっかりやめちゃいました。
無反応だし、情は移るし、何よりある獣医さんに「言い方悪いけどこのコは宣伝に使える」と言われたからです。犬猫の現状を伝えたい、という私たちの思いを、茶々の存在が手伝ってくれるはずだとおっしゃるのです。これが後に母校の小学校で授業をさせていただくことにつながっていくということを、この時の私たちは知る由もなかったのですが・・・。そのお話はまた今度。
こうして茶々の初来訪から3ヵ月後、我が家における彼女の立場は「一時預かり」から「一生一時預かり」に変わりました。

ま、茶々にはカンケーないことみたいですが。


ん? 車椅子・これからお散歩なの

お散歩編
茶々は他の犬たちと同じでお散歩が大好きです。ご自慢のマイカー(専用車椅子)にサッソーと飛び乗り(うそうそ。私たちが乗せてあげてます。)普段はタレ〜ンとしているシッポをアンテナのように高々と上げてガシガシ歩きます。なぜか車椅子に乗るとシッポがあがり、バランスをとるようにフリフリと左右に揺れるんです。普段は動かないし、うっかり踏んでしまっても「痛い」とも「なにすんのよ」とも「ふざけんじゃないわよ」とも言わないので、神経が通っているようには見えませんが、心の神経は通っているようで、どぅわい好きなお散歩に出かけるとついつい喜びの表現をしちゃうようです。
切断され10cmほどになってしまった後ろ足もポイントで、車椅子に乗せると前後に「よいしょ、よいしょ」とゆすります。歩いているつもりなのか、ただの反応なのかわかりませんが、一時あまり勢い良く振るので、車椅子にあたってしまい、ひざ(じゃないか。切断面ですね。)がザックザクに切れてしまいました。(うひーっ、痛そー!)靴下をはかせたり、出来る限り後ろにセットしたり、車椅子製作者のAWSの獣医さんは足があたる部分に巻物をしてクッションを作ってくださったりして、今は何とかザクザクしなくなりました。でも相変わらず前後に振るのでクッション部分にガンガンあたってますが。
たまに夜中に犬たちを連れだし、近くの公園などでリードを放します。(法律違反ですね。ご内密に。)放すと他の犬と一緒になってすんごい勢いで走りまくり、急ターンをしてはガシャンと車椅子が横倒しになってしまいます。たいていそこで、女座りになり「早く起こして〜ん」と例の上目使いをするんですが、あまりに興奮していると転んだことも気づかずに、倒れた車椅子を引きずって走り続けようとします。無茶しないで下さ〜い。
こんなことや、成長して少々車椅子が体に合わなくなってきたこともあり、ニューカー製作を決定しました。と、言っても私たちが作れるはずもないので、ある獣医さんのご紹介で外注しました。ニュータイプの車椅子は、多少の急カーブにも倒れる事のないよう設計されていますが、他に問題が多々生じ、2001年5月現在いまだ調整製作中です。うまく機能してくれればターンも可能だし、多少のボコボコもへっちゃらになるらしいので、製作者の方、早いとこ完成させて下さい。

車椅子・斜め前 衝撃! オールヌード

余談ですが、おうちの中では車椅子は使わずに、おすわり状態でお尻をちょっぴり浮かし、やっぱり前足だけでチャッチャカ歩きます。散歩でガシガシ、家ではチャッチャカ。おかげでボディビルダーか水泳選手のように上半身だけムキムキの素晴らしい肉体美になってしまいした。女の子なのに…。

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