フランス共和国「動物実験に関する政令」 1987年10月19日
Decret aux Experiences Pratiqueee sur les Animaux
刑法第454条および農地法第276条第3項の実施のために定められた動物実験に関する1987年10月19日付政令第87-848号(農業省)
首相は,国璽尚書,法務大臣,国防大臣,設備・住宅・国土開発・運輸大臣,文部大臣,社会問題・雇用大臣,産業大臣,郵政・観光大臣ならびに農業大臣の報告に基づき,農地法,とくにその第276条,刑法,とくにその第453,454および第25条,自然保護に関する1976年7月10日付法令第76-629号およびその実施のために定められた1977年11月25日付政令第77-1295,77-1296および77-1297号,環境保護のための担当区分に関する1976年7月19日付法令第76-663号およびその実施のために定められた1977年9月21日付政令第77-1133号,農地法第215-1〜215-5および283-1〜283-4号の適用に関する1973年9月4日付政令第73-865号,担当区分に関する1976年7月19日付法令第76-663号第2条の適用のために定められ変更された1978年10月24日付政令第78-1030号,農地法第276条の適用のために定められ変更された1980年10月1日付政令第80-791号,国防大臣が管轄するまた国防上の秘密保持規則の対象となる環境保護のための担当区分に関する1980年10月15日付政令第80-813号,行政と使用者との関係に関する1983年11月28日付政令第83−1025号に鑑み,参事院(公共事業部門)の了承を得たうえで,以下の政令を発令する。
第T章 実験および実験者
第1節 実 験
第1条
生きた動物を対象とする実験または研究は,それが必要なもので,他の実験方法に代えることができず,さらに以下の目的で実施される場合には適法なものとする。
a)人,動物または植物の病気またはその他の異常の診断,予防および処置。
b)放射性元素を含む薬品ならびにその他の生物および化学物質とその組成の作用,効果 および毒性に関する試験,ならびに人および動物の治療に使われる資材の試験。
C)人ならびに動物の生理学パラメータの管理および評価。
d)生群食料品の品質管理。
e)基礎研究および応用研究。
f)高等教育。
g)動物実験または動物の介護と管理を含む職業のための技術教育および職業訓練。
h)環境保護。
第2条
以下の行為は,本政令の意味での実験とはみなされない。
a)無脊椎動物に対し行なわれる実験および卵生脊椎動物の胎子を対象とする実験。
b)いかなる苦痛も与えないような条件に置かれた動物を観察する実験。
C.)実験ではない農学上または獣医学上の行為に関係した手術。
第3条
苦痛を与える恐れがある生きた動物に対する実験は,全身または局部麻酔をかけたうえで,または同類の鎮痛法を施したうえで実施しなければならない。ただし,麻酔または鎮痛措置が,動物に対して実験そのものよりも一層の苦痛を与えると判断される場合は,この限りでない。
実験に麻酔または鎮痛措置が使えない場合には,その実験の回数は必要最少限に止めなくてはならない。正当な理由がある場合を除き,麻酔または鎮痛措置なしの実験は,同じ動物に対しては1回に限られる。
第4条
実験後に動物が長期間にわたり,または恒常的に苦痛を感じる恐れがある場合,またはとり返しのつかないか長期的な損傷の影響を受けなければならない場合には,その動物を生かしておくことはできない。このような場合には麻酔が切れる前に,または麻酔がかけられていない場合にはできるだけ早い時期に,動物を致死させなくてはならない。
動物が生存状態に置かれる場合には,実験終了後,直ちに苦痛の緩和に必要な措置を施さなくてはならない。
第2節 実験者
第5条
動物実験を行なう者はすべて,本政令第70条およびそれに続く条項に定められる条件に基づき,農業大臣が発行する記名式の許可(ライセンス)を持っていなければならない。それがない場合には,この許可を持った者の監督および管理のもとで行なわなくてはならない。
許可には総合許可と特別許可がある。許可の名義またはその監督および管理下で作業を行なう者は,その許可の範囲でしか実験を行なうことができない。
第6条
実験者は,本政令第V章および第W章に定められる条件に基づき認可された施設の室,付属建物において,その施設の設備を使用して活動を行なわなくてはならない。
第U章 実験動物とその保護
第1節 実験動物
第7条
保護動物種に適用される法律および規則に定められた規制を条件として,あらゆる種類の動物を実験に使うことができる。
農業大臣,研究担当大臣および自然保護担当大臣は,実験施設が自らその活動に必要な動物の繁殖を行わない場合に,本政令第V章および第W章に規定される手続きに従って届出を行なった繁殖施設から入手しなくてはならない動物種のリストを共同で作成する。このリストおよびその改訂版は,フランス共和国め官報に発表される。
第8条
第7条第2項の規定の適用によって,実験施設が研究に必要な十分な数の動物を入手できない場合には,この施設は以下の方法を採ることができる。
a)本政令第V章および第W章に規定される手続 きに従って届出を行なった供給施設に頼る。
または,
b)実験が行なわれる場所の共和国委員による許 可を条件として,臨時の供給者に頼る。
動物飼育所を持つ実験施設または実験動物飼育施設または実験動物供給施設に対する科学的研究を目的とした個人による直接的な動物の譲渡は,無料で行なわなくてはならない。上述の機関にこれを受け入れる義務はない。
第2節 実験動物の保護
第9条
実験施設および実験動物の飼育施設または供給施設の責任者およびスタッフは、自らが所有する動物に対して,上述の1980年10月1日付政令第1条の規定から発生する義務を守らなくてはならない。
さらに,これらの施設に収容されるイヌ,ネコおよび離乳した霊長類は個別の恒久的なマーキングを施して識別できるようにしなければならない。
第V章 許可,認可および届出の手続き
第1節 実験の許可
第10条
実験許可の申請は,配達証明付きの書留郵便にて農業大臣宛に出されなければならない。その複写一部は,申請者の主要な活動を管轄する大臣に宛てられる。
農業大臣と研究,高等教育,文部,厚生,産業および自然保護担当の大臣の共同の政令により,実験許可の申請者が証明しなくてはならない資格および特殊教育のリストを定める。
申請書類には,申請者が動物および自然保養に関する法律および規則に対する違反で有罪宣告を受けていないこと,および名誉または誠実さに反する行為によって刑罰または懲罰を受けていないことを証明する書類が含まれなければならない。
第11条
農業大臣は,申請された許可の範囲を狭めたり有効と思われるあらゆる条件を付与することができる。
申請を受理した日から2か月を経過しても明白な許可または理由を明らかにした却下が表明されなかった場合には,許可が与えられたものとみなされる。
第12条
実験許可は10年間にわたり有効で,暗黙の更新がなされるものとする。
許可の名義人が活動を停止したとき,または許可が下りたときの条件で活動を行なわなくなったときには,許可は失効する。
農業大臣は,本政令第T章および第10条第2項の規定に対する違反があった場合には,一時的または永久に実験許可を取消すことができる。ただし,この措置によって,許可の名義人またはその監督および管理の下に活動する者が刑事上の訴追を免れることはできない。また農業大臣は,許可の範囲を変更することができる。
特別の権限を持つ監視官によって,重大な違反または同じ規定に対する再三の違反が確認された場合は,共和国委員は,許可の一時的な停止を宣言することができ,それは農業大臣に報告されなければならない。
第13条
農業大臣は,実験許可を持つ者のリストを改訂することができる。農業大臣は,他の関係大臣に対し,毎年.与えた許可,変更または停止した許可についての報告を行なわなければならない。
第2節 実験施設の認可
第14条
動物実験を行なっているすべての施設は,農業大臣と施設の活動を管轄する大臣に対して,配達証明付きの書留郵便にて,同時に認可申請を出さなくてはならない。
この申請には,以下を含む書類が添付されなければならない。
a)動物の飼育および実験の実施のための設備
概略説明。
b)第1節に規定される許可の名義人以外で動物実験に参加する者の資格に関する簡単な 記述。
農業大臣と研究,高等教育,文部,厚生,産業および自然保護担当大臣との共同の政令により,施設の設備,上述のb)項に記載される者の最低人員数および資格について満たさなくてはならない基準を定めることができる。
第15条
認可には,施設の目的,設備の種類およびスタッフの資格に応じて絵合的な認可と特別な認可とがある。
認可は,農業大臣と施設の活動を管轄する大臣との共同の政令により,5年間の期間で同意され,暗黙の更新がなされる。この政令により,申請された認可の範囲が狭められたり,管轄の大臣が有効と判断する条件が付与されることがある。
第16条
実験施設の認可は,施設が本政令第T章および第V章の規定または認可に付与された条件を遵守しなかった場合には,一時的または永久に変更または停止されることがある。
第17条
農業大臣は,認可施設のリストを改訂する。農業大臣は,毎年,本政令の第27条に基づき組織された委員会に対して,同意,変更または停止した認可に関する報告を行なう。
第3節 実験動物の飼育および供給施設
第18条
実験動物の飼育または供給施設の開設には,施設の設置が予定される場所の県の共和国委員に対する事前の届出が必要である。
第19条
以下の申請は,上の条項の届出に相当するものとする。
a)実験施設がその活動のための動物の全部または一部を自ら飼育する場合には,実験施設が提出する認可申請。
b)上述の1977年11月25日付政令第77-1297号に規定される許可申請。
c)当該の施設が,環境保護のために区分された担当に関する1976年7月19日付法令の適用を受ける場合には,この法令に基づき行なわれる許可申請または届出。ただし,許可申請または届出に,施設の目的が実験動物の飼育または収容である旨が明白に記載されている場 合に限られる。
第W章 国防分野の動物実験に関する特例
第20条
本政令第5条および第10条の特例として,予定される実験が国防上の秘密に関係するときには,国防担当大臣が実験許可申請を受けてそれを予審し,許可に同意または却下する唯一の権限を有する。
許可は,国防担当大臣の権限に属する研究に必要な実験に限り,国防担当大臣から与えられる。この許可は,自由裁量で停止されることがある。
第21条
上の第V章第2節の特例として,国防担当大臣は,その権限に属する実検施設を,自らが定める条件で認可する唯一の権限を持つ。
第22条
上の第V章第3節の特例として,国防担当大臣の権限に属する実験施設用の動物の飼育または供給施設の届出は,軍当局によって行なわれる。
第X章 監督と処罰
帯23条
農地法第283-1条によって与えられた権限の枠内で,獣医学検査官は,実験施設ならびに実験動物の飼育および供給施設において,本政令第T章および第U章に基づく検査を行なう権限を持つ。ただし,国防上の秘密に係わる実検の実施に関する検査は,軍当局より特別の権限を与えられている獣医師によってしか行なうことができない。
農業省の技術負および獣医局の技術者は,農地法第283-2条に規定される権限の枠内および限度で,実験動物の飼育および供給施設の検査を行なうことができる。
第24条
動物実験を実施する者はすべて,本政令第5条に規定される許可を,または,許可が暗黙のものである場合には,申請の受領証を検査官に見せられるようにしておかなくてはならない。それができない場合には,許可を持った者の監督および管理のもとで実検を実施していることを証明しなくてはならない。
第25条 ・
実験施設および実験動物の飼育および供給施設の責任者は,検査官からの要請があればいつでも,施設内に収容されている動物の起源が記載された登録簿を見せなければならず,また見せられるような状態にしておかなければならない。
第26条
本政令第8条,14条,15条,16条,18条,24条および25条の規定に対するすべての違反は,刑法第R.38条および第R.39条に規定される処罰の対象となる。
第Y章 動物実験国家委員会
第27条
研究担当大臣および農業大臣のもとに,動物実験国家委員会が設置される。
この委員会は,動物実験に関する法律および規則のすべての変更案に対し答申を行なう。
委員会はまた,それらの大臣から以下に関する諮問を受け,有効と判断する意見を述べ,提案を行なう。
a)生きた動物の使用を避けるための実験方法の 確立。
b)動物の使用が不可欠な場合の実験動物の飼育。
c)実検動物の輸送および使用条件を改善するための方法。
d)科学的および実験的な目的で動物を使用する者ならびに研究室の技術者の教育。
e)より一般的に,本政令の適用条件全体。
第28条
動物実験国家委員会の議長は,参事院の副議長から6年間の任期で指名された現役または退役の参事院のメンバーが務める。
その他に,国家委員会は以下の者より構成される。
1)農業大臣および研究担当大臣の共同の政令によって3年間の任期(更新可能)で,関係大臣のそれぞれの提案により任命される8名の政府代表者。その内訳は以下の通りである。
a)研究担当大臣の代理人1名。この者は,議長が欠席または支障の際には議長の代理を務める。
b)農業大臣の代理人1名。
c)高等教育担当大臣の代理人1名。
d)文部担当大臣の代理人1名。
e)厚生担当大臣の代理人1名。
f)産業担当大臣の代理人1名。
g)自然保護担当大臣の代理人1名。
h)国防担当大臣の代理人1名。
2)農業大臣と研究担当大臣の共同の政令によって3年間の任期(更新可能)で任命される12名の有識者。その内訳は以下の通りとする。
a)公共的な研究を代表する3名の有識者。
b)民間産業部門を代表する機関から推薦された3名の有識者。
c)動物および自然保護団体から推薦された3名の有識者。
d)動物実験の専門家から推薦された3名の有識者。
票が分かれた場合には,議長の票が優先される。
第29条
動物実験国家委員会のメンバーが辞任,死亡の場合もしくは任命の根拠となった職務を停止した場合は,後任が任命される。新しいメンバーの任期は,前任者の任期満了時点までとする。
第30条
動物実験国家委員会は,議長の召集により,少なくとも1年に1度は会議を開催する。また,会議は,メンバーの3分の1の要請により開催される。
委員会の事務局は研究担当大臣の部署が担当する。
第31条
動物実験国家委員会の議長は,議事の一定の部分に諮問の形式で意見を聴くことが有用と自らが判断するあらゆる人物を召集することができる。
第32条
動物実験国家委員会は,委員会の内部規則を作成し,欠席または支障のあるメンバーの代理条件ならびに票決方法を定める。
第33条
動物実験国家委員会は,とくに実験動物の生産機関と使用機関との間の連絡を担当する技術委員会に補佐される。
この技術委員会のメンバーは,国家委員会内部または外部の人物とすることができ,農業大臣と研究担当大臣との共同の政令により,技術委員会の中でそれぞれの利益が均衡に代表されるように任命される。
第Z章 最終規定および臨時規定
第34条
刑法第R.24-14〜R.24-31条は廃止される。
第35条
本政令が公布された日に効力を持つ実験許可は,第10条に規定される政令の公布日から2年後に失効する。この許可は,第12条に規定される条件に基づき変更,取消しまたは停止されることがある。
この期間に新たな許可申請を提出しなくてはならない。
第36条
本政令の公布の日に既存の実験施設については,第14条に規定される政令の公布日から1年以内に認可申請を提出する必要がある。
第37条
国璽尚書,法務大臣,国防大臣,設備・住宅・国土開発・運輸大臣,文部大臣,社会問題・雇用大臣,産業大臣,郵政・観光大臣,農業大臣,設備・住宅・国土開発・運輸大臣付環境担当副大臣,文部大臣付研究・高等教育担当副大臣,社会問題・雇用大臣付厚生・家族問題担当副大臣は,各々に関係する分野で,フランス共和国官報に公布される本政令の施行を担当する。
1987年10月19日パリにて作成
首相 ジャック・シラク
農業大臣:フランソア・ギョーム
国璽尚書・法務大臣:アルバン・シャランドン
国防大臣:アンドレ・ジロー
設備・住宅・国土開発・運輸大臣:ビニール・メエーニュリー
文部大臣:ルネ・モノリ
社会問題・雇用大臣:フィリップ・セガン
郵政・観光大臣:アラン・マドラン
設備・住宅・国土開発・運輸大臣付環境担当副大臣:アラン・カリニョン
文部大臣付研究・高等教育担当副大臣:ジャック・ヴァラド
社会問題・雇用大臣付厚生・家族問題担当副大臣:ミシェル・バルザク