<ウッキーたちのはなし>
ウキシマというゴミの埋立地に犬を捨てに来るヒトがいました。
このゴミの埋立地は、周りが少し背の高い草で覆われていて、夜は人気もないので、
人目につかず犬を捨てることができるのです。
捨てられた犬はゴミの中で一生懸命生きました。ゴミを食べ、泥水を飲んで生き抜き
ました。
そして6匹の子供を産みました。
生まれた子供たちはお母さんに守られて、ゴミの埋立地で人間と接触することもな
く、スクスク育ちました。
5匹は力を合わせ、ドジョウをとったり、鳥を捕まえたり、野生動物のように暮らし
ていました。
でも犬が全く人間界と接触せずに暮らすことは、今の日本では不可能に近かったので
す。
やがて通報され、センターの職員さんは捕獲器を設置しました。
捕獲器で捕まったのは子犬が5匹。お母さん犬と仔犬1匹はどうしても捕まりません
でした。
センターの職員さんはここから来るコたちを皆ウッキーと呼んでるそうです。
捕獲したウッキーたち5匹のうち、私たちは4匹をセンターから出しました。
1匹は殺処分しました。
処分したコは、このコたちのリーダーで、オスで噛み付きがありました。野犬のリー
ダーのオスが成犬になったとき、どうなるかわからないということもあったし、噛み
付き癖がこのまま直らない可能性を考えました。他のコも噛むコはいましたが、セン
ターにいる間に噛まなく
なりました。このコだけ噛むのをやめてくれませんでした。

センターの、飼育と処分担当の若い女性は、忙しい毎日の業務の間を縫ってはウッ
キーたちのところに行き、撫でたり、優しい声をかけたり、抱いたりして、何とかヒ
トに馴なれさせようとしました。ヒトに馴れさえすれば、センターから里子に出せ
る、処分しないですむ。そう思えば、抱っこするたびに噛まれることも、ウンチやオ
シッコを漏らされ、服が汚れるのも気にしてられませんでした。(ウッキーたちは
抱っこをすると恐怖のあまり漏らしてしまうのです)
でもウッキーたちには1週間という短い間に、生まれてこの方見たこともない「人
間」という巨大なモンスターに馴れることなんて出来ませんでした。
たまたま別件でセンターに行った妹と私は最初に1匹だけ捕獲されたウッキーと対面
しました。個室の奥に小さな身体をピッタリとつけ、恐怖におののいた目でこちらを
見ていました。
そのコは茶々に似ていました。小さな茶々がこれ以上はない恐怖に身すくめていまし
た。
職員の女性から話を聞き、センターで里子に出せなくても何とか私たちで出せないか
と話し合いました。
台風が来た日、会社から午前中で帰るようにとお達しが出され、会社から帰ってき
た私と妹と、パネル展で知り合ったドッグトレーナー(訓練士ではなく妹と同じ思い
で犬と接する人です。穏やかで癒し系の優しい男性です)の方と3人でセンターに出
向きました。それぞれ個室ケージに入っていたウッキーたちを出し、サークルの中にひ
とまとめに入れて、観察し、触ってみて、抱いてみて、話し合ってって話し合って、
リーダーのコだけ諦めようということになりました。
私はトレーナーである妹や彼と違い、直接噛み付き犬に関わったことがないので、噛
み付き犬の怖さ・矯正についてなど全く実感がありませんので、こ
のコも出したい、なんとかなるんじゃないかと思いました。でも連れてきても実際の
世話をするのは、ほとんど妹ですし、色々な噛み付き犬を見てきた彼らの意見は、里
親さんに噛み付いたらこのコも里親さんも不幸になるとのことでした。そしてその可
能性が高いと。私が感情だけで決めるわけにも行きませんでし
た。妹はこのコに「ヤマトくん」と名前までつけていました。諦めるのはさぞ辛い選
択だったと思います。センターの方も「このコはやめた方がいい」と言ってました
が、やはり仔犬を処分機に入れるのはとてもとてもイヤだったと思います。
ヤマトは処分機に向かう道すがら、暴れて暴れて噛んで噛んで抵抗したそうです。や
はり自分がどうなるかわかってしまうのですね。
(後日全員を預かってくださると申し出てくださった方がいたのですが、ヤマトの殺
処分に間に合いませんでした。)
ヤマトのお母さんを捨てた人間が憎いです。

お母さん犬はまだ捕まってないから、また子供を産むかもしれない、また通報がある
かもしれない、通報があったらセンターは捕獲しなければならない、捕獲して馴れな
かったら仔犬をまた処分しなければならない。悪循環をどこで断ち切ることができる
でしょうか。
救えなかったヤマトの分まで、出してきた4匹には絶対に幸せになってもらわねばな
りません。
出してきてしばらくは固まっていて、抱っこしようものなら相変わらず、おしっこと
ウンチの嵐でしたが、仔犬の順応性はすばらしいです。うちに3匹、(最初の1週間
く
らいは、2匹を茶々関係のボランテイアさんに預かっていただいてましたが)トレー
ナーの彼のところに1匹いましたが、皆それぞれの個性でなついてく
れました。まだまだ急に近づこうとするとわーっとケージに逃げ込んでしまいます
が。
茶色のメスのりんはお試しに入って1週間たちますが、順調そうです。このままこの
ご家族が里親さんになってくださることを願っています。サザエさん一家のような大
家族で、おばあちゃん(と言ってもまだお若いです)が、りんが家に馴れるまでは
と、大事にご自分のお部屋で育ててくれています。
トレーナーの彼が預かってくれていた、ブラックタンのメスのリオは昨日の里親会で
ステキな里親さんが見つかり、昨日のうちにお届けをしてきました。3人のお子さん
を持つお母さんとお父さんですが、お母さん(と言っても私より若い)が犬が大好き
でずっと里親会をのぞいていたそうです。「リボンをかけて大事に育てます!」と
おっしゃってくださる豪邸に住むご家族です。名前もリオからローズという、お嬢様
ネームに変わりました。

あと薄茶色の茶々似のメスのバンビ(茶々にも似てますが、全体像は子鹿のバンビ
だったので。芸がないネーミング)とリオと同じブラックタンのオスのベルのふたり
に暖かい家族を見つけねばなりません。
いつも思いますが、私たちの責任はとてもとても重いです。この子達の一生を左右す
ることを握っているのですから。
ウッキーたちは4ヶ月半で仔犬にしては、そろそろヤバイ大きさなのでさっさと出さ
ないと大人になってしまう!
がんばってくれよお!と祈る毎日です。
がんばれウッキー!
追伸
「残りのバンビとベルも良いご家族に里親さんになっていただ きました」